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ファイロファクスとiPhone6S
2016/04/30
長年愛用してきたスケジュール手帳(昭和62年3月購入のファイロファクス)、最近ほころびも目立ち始め、それでもこれがないともう絶対ダメ、みたいな自分の身体の一部になっていたような道具でしたが、ついに最近意を決して、iPhone6sにスケジュールを移し替えることにしました。
4日前の4/24に作業を始めました。
アイフォンのアプリはlifebearというカレンダースケジュール帳です。

恐る恐る使い始めましたが、なんとか使えそう。
利点としては、なんといっても、いつでもすぐに、スケジュールを書き込んだり確認できること。
もちろんデジタル故の小さな不満はあちこちで感じられますが、逆に検索機能や過去の記録、更にはバックアップといったところまで、かなり信頼して、そして非常に便利に使えそうなので、できれば今まで手帳で扱ってきたデータはすべてこちらに移行しようかと思っています。
今の所一番怖いのは入力ミスによるスケジュールの間違い。
慎重に、気をつけて入力しなくちゃ、です。

それにしてもおよそ30年も愛用した手帳とほんとに別れられるのだろうか(文字通り)と、それが不安です。
まあ、この手帳にはもう少し役目を作って、もうしばらくは一緒にいたいと思っています。
なんたって、僕の仕事ぶりや人生そのものまで、いつもそばにいてずっと見守ってくれた大事な大事な手帳ですから。
ほんと汗も涙も染み込んでいます(笑)。
ファイロファクスとiPhone6S
ファイロファクスとiPhone6S
手回し蓄音機の音
2013/06/08
そのスクェアピアノによるコンサートと時間を前後して、やはり県芸芸術資料館所蔵の、およそ100年前の蓄音機による78回転SPレコードの鑑賞会があり、僕も調律の空き時間を利用して聴かせてもらいました。
この日はシューベルトの魔王と、オー・ソレ・ミオ、2曲の歌曲でした。
蓄音機はもちろん電気なんか使わず、横に着いているハンドルを手でぐるぐる回してネジを巻き、レコード盤に刻まれた音の振動をピックアップで拾い、それを電気の力も何も借りずにそのまま音として(紗幕の中にたぶんある)ラッパから出します。

その音!
もちろん回転ムラとかはそのまま音に出てくるのですが、その音色が何とも言えずリアルで心に迫るのです。
思わずスピーカー?の前にしゃがみ込み、そこから出てくるバリトンとピアノの音に聴き入ってしまいました。ふと見ると、その蓄音機の開いた蓋の内側に、例のあのビクターのマークが貼ってありました。
それを見たとき、僕はあのマークに描かれている犬になった気分でした(笑)。
いやあ! あの犬の気持ちがよくわかりました!

あのリアルさは何なんでしょうね。
音の入り口と出口の間に余計なものが何もないから、あんなリアルな生々しい音になるのでしょうかね。
あの、貧弱な頼りのない音色が僕の心を捉えて離しません。
手回し蓄音機の音
手回し蓄音機の音
スクェアピアノによるコンサート
2013/06/08
一昨日6日は愛知県立芸大の芸術資料館で、北住淳先生によるスクェアピアノのコンサートでした。

僕は朝から調律で、半音とさらに70セントほどもピッチの下がったそのピアノをなんとか半音下がりまで引き上げなければいけません。
何しろ160年ほども前のピアノなので、慎重にしないと何が起こるかわかりません。
普通ですと、70セントくらいなら軽く1回で上げますが、今回は2回に分けて上げるべく取りかかりました。
結局は4回調律をしてやっと何とか持っていくことができました。さらに最後に全体を拾ってやっと落ち着きました。音程もちょうど半音下、なんとなくピチッと落ち着いた感じです。
あと音色のバラツキなども、できるだけピアノにストレスをかけず取れる範囲で取りました。

そうやって迎えたコンサートですが、まずお客さん、と言っても芸大生の方がほとんどだと思いますが、それでも予想以上?の百人くらいは軽く入っていたと思います。
ちょうど所蔵品展示中のコンサートのため、ほかの楽器や美術品が並ぶ中、皆さん思い思いの場所を陣取り、北住先生とスクェアピアノの醸し出す19世紀の音の世界に、文字通り酔いしれました。
現代のアタック音のある、まあそれはそれで明快な音なんですが、それとは違うきらびやかな、ある意味非常にモダンさを感じさせる、美しい木と、ちょっとハイカラな金属音の混じった明るい音です。それが会場の高い天井の空間を満たしました。
プログラムはバッハ、モーツァルトからサティまで、いろんな時代の音楽を味わえて、それも非常に面白かったです。スクェアピアノで純粋に音楽を楽しませてもらいました。
心に残るコンサートでした。

最近よく思うこと、それはピアノ音楽はあの88鍵の細長い鍵盤の上にあるのではなく、その鍵盤の奥にあるのだということ。
ピアノのそのボディから聴こえてくるピアノの響きに、もっともっと耳を傾けなければ、ということを思います。まあ、ちょっとした差なんですが…。

写真はリハーサル風景と本番、そして僕もピアノと記念撮影です(^_^)。
スクェアピアノによるコンサート
スクェアピアノによるコンサート
県芸のスクェアピアノ
2013/05/29
ただ今愛知県長久手町にある愛機県立芸術大学の中にある芸術資料館の展示室で、収蔵資料の展示がおこなわれています。6月12日(水)まで。
実はそこで今展示されている収蔵品のなかに、1850年デンマーク製のスクェアピアノが入ってまして、それの修理と調律の依頼を受け先日より取りかかってます。
一昨日は調律をメインで伺ってきました。
最初、音の狂いはもちろん、音が何カ所か出なかったりあるいは音が止まらなかったりとかで、けっこう大変な状態でしたが、なんとか昨日にはまとまり、演奏も何とか出来る状態になりました。
6月6日(木)16:30からは、音楽学部の北住淳教授による、このスクェアピアノでのコンサートとレクチャーもおこなわれます。

そもそもこの仕事は北住先生より相談を受け、させていただくことになったものです。
写真も載せましたが、こんなスタイルのピアノにしてはしっかりした造りで、アクションなんかも、もちろん今のピアノなんかとはかなりちがいますが、それでも何とか弾ける状態にまでは持っていくことができました。調律のピッチだけが、現在1音近く下がっており、北住先生が、鍵盤を押さえる場所と出てくる音の高さがちがう、とかなり手こずっていました。
でも最終的には半音下がりくらいまでは持っていきたいと考えています。
結構不安ではありますが・・・。

昨日調律が終わった後、北住先生がいろいろ試弾されました。
このスクェアピアノ、ボリュームこそあまり出ませんが、その出てくる音色がとてもすばらしい!
柔らかい艶のある木の響きの音が出て、何か五感に直接響いてきそうな音です。
北住先生が一番最初に弾いたバッハのプレリュード1番の美しかったこと!
心に深く残りました。
展示室にはこのピアノのほかに、チェンバロを始めいろんな楽器や、またその他の美術作品なんかもあり、会場に足を踏み入れたとたん、それらの作品から受ける波動のようなものが、ずっと僕を刺激しつづけていました。何か人生で大切なものを忘れてきた様な気がする、そんなことを思い出させるような、不思議な感触を覚えました。

期間中はずっと入場無料でまた誰でも入れるということで、皆さんももし時間が許せばぜひお越しください。できれば6日のコンサートにでも是非どうぞ!
県芸のスクェアピアノ
県芸のスクェアピアノ
古典調律
2012/02/20
伊勢市にお住まいの廣めぐみさんは声楽専門でオペラなどにもよくご出演されている、すばらしい歌唱力をお持ちの声楽の先生。その廣さんから先日ピアノの調律のご依頼を頂いて、お伺いしてきました。
ピアノはヤマハG3Eなのですが、現在そのピアノにされている調律はなんと古典調律のヴェルクマイスター3!
聞けば、彼女が数年前に古楽の先生に紹介してもらった本「ゼロビートの再発見」&「同 技巧編」(平島達司著)を読み、以来その本に書いてあったヴェルクマイスター3に調律変えをしたそうなんです。

あたかもちょうどその頃、ピアノ調律師協会の三重支部で「古典調律によるピアノコンサート」というのを企画をして、(言い出しっぺは僕)三重県文化会館第1リハーサル室で北住淳先生のピアノによりコンサートを開催した頃だったのです。
廣さんもやはりそのコンサートを聴きに来られていて、今日も、「あれはとってもおもしろいコンサートだった」と言っていただき、北住先生の繊細で大胆な素晴らしい演奏とも相まって、僕たちも苦労?してコンサートをした甲斐があったと改めて思ったのでした。
当時、「古典調律なんて、普通の(平均律の)調律と聴きくらべないとわからないんじゃないか?」とかいろんな人にずいぶん言われたのですが、あえて比べる対象(の楽器)を置いたりもせず、古典調律をされたピアノ一台のみでコンサートをしたのですが、コンサート直後から「おもしろかった」と多くの人から言っていただき、6年ほど経った今でも今日のように話題に出していただけたことが、本当にうれしかったです。

自分でいいと信じたものは、多少の反対があってもやってみるもんですね!
きっと聴いてくれている人がいるんですね(^ ^)。
コンサートをした甲斐がありました。
そして、もし廣さんの、ピアノの響きに対する美意識に、少しでも、自分たちが企画したあのコンサートが役に立っていたのなら、そしてまた、今日自分がしてきた古典調律がこれからも廣さんの音楽に少しでも役に立っていくのなら、こんなにうれしいことはないです。
古典調律
古典調律